ブドヴァイゼル・ブドヴァルのチェコヴァル。



この醸造所は1895年にボヘミア地方にあるブドヴァイゼルで創立。会社の正式名はブドヴァイゼル・ブドヴァル社だが、同じ町には都市名であるブドヴァイゼルを冠した醸造所が他にもあるためブドヴァル社(英語圏ではバドバー)と呼ばれている。

この醸造所のあるブドヴァイゼルは、ドイツ語ではブドヴァイス、チェコ語ではブドヴァイゼル、そして英語ではバドワイザーと発音するのだが、これが原因で後に一悶着起きることになる。1990年、鉄のカーテンの完全崩壊により海外市場への門戸が開かれると、ブドヴァル社は英語圏であるヨーロッパ用に自社ブランド名を英語に翻訳した「バドワイザー」を商標登録し販売、いくつかの地域で順調に販路を拡大していった。そこにアメリカ発祥の世界企業・アンハイザーブッシュ社が立ちはだかる。

アンハイザーブッシュ社は、当時アメリカで大流行していたボヘミア産のピルスナーを参考にピルスナーを開発しており、それに産地であるブドヴァイゼルにあやかって、その名を英語に変えた「バドワイザー」を商標登録し販売した。これが皆ご存知の、あのバドワイザーである。アンハイザーブッシュ社はバドワイザーがアメリカ国内で好調な売れ行きを示すと今度はヨーロッパで販売しようとする。しかし、ヨーロッパではブドヴァル社の商標によりいくつかの地域で販売できないことを知ると、政府にロビー活動したり、現地に公民館を建設し寄付するなどしてブドヴァル社を買収しようとした。これがヨーロッパののビール愛好家の反感を買い、買収は一旦断念されたが、世界的M&Aが流行している昨今、またも買収話が浮上するのかもしれない。



さて、気になるお味のほうは、口に含むと、まずは苦みとキレがよく主張してきて、その奥で甘さがうっすらある感じ。その後に苦みとキレが弱くなると甘みが目立ってくる。ウルケルよりもまったり感がほんの少しあり、甘味は少し薄く、苦味も尾を引かないように思う。一瞬のうちにまったりサッパリ感を味わえる一品だ。